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 旧伊勢屋質屋(東京都文京区)

 樋口一葉が五千円札の顔に決まって以来、台東区と文京区では一葉ブームが繰り広げられてる。「たけくらべ」の舞台となり一葉記念館のある台東区竜泉町と一葉の短い生涯のうち10年あまりを過ごした文京区西方、本郷界隈だ。それぞれが「ゆかりの地」として広報活動を行っている。
 
 実はこの二つの町は直線距離にしてみれば3kmもないが、公共交通を使うと何回も乗り換えが必要だったり、行政区の違いもあってかなり遠くに感じる。でも明治時代の人はどうだろうか?当時は2km、3kmを歩くのは当たり前だったろうし、案外行き来していたのではないか……と僕は密かに考えている。
 
 このブームの一環で嬉しい企画があった。一葉が通った質屋として有名な旧伊勢屋が公開されたのだ。本郷の菊坂にある旧伊勢屋は通りに面して重厚な蔵と美しい格子の店を持つ質屋である。共に明治時代の建物だ。
 
 通りからちょっと奥まった玄関から中に入ると右手に蔵、左側に店そして奥に座敷と庭という間取りになっている。店には実際に使っていたという台帳などが展示されていて、ボランティヤの女性が質屋の台帳の逸話を語ってくれた。
 
 貸し借りの記録が綴られた台帳は命の次に大切なモノなので、火災時には裏庭の池の中に放って火の手から守ったそうな。
コピー用紙にインクジェットプリントの書類に慣れてしまった僕には信じられない話だが、当時の台帳は和紙に墨書きだったので、たとえ水に浸かっても字が流れることもなく乾かせば一枚一枚元通りに読めるようになったらしい。かなり乱暴な気もするが、火事の中を重い台帳を持ち歩くよりもよっぽどその方が安全な手段だったようだ。

 
 蔵と店の間にある廊下を進むと左側に(蔵と座敷に挟まれて)坪庭がある。奥まった座敷に光と風を運び入れる正に一坪ほどの狭い空間だ。手荒い鉢と庭石、そしてナンテンが植わっているだけのシンプルな庭だが、店と蔵が暗く閉じた場所なので、こういったちょっとした空の演出が気持ちいい。
 
 この坪庭は採光と換気といった機能だけでなく、職場と生活空間を分ける緩衝帯でもあったようだ。店では客の持ち込んだ品々を厳しい目で鑑定しながらも、座敷ではゆったりと庭を見ながらくつろいでいた主の姿が想像できる。
 
 平成の世の中でも街で質屋を見かけることがある。看板を見ると「ローレックス高価買い取り」などとブランド名が書かれていることが少なくない。
価値有るモノを質入れすることは今も昔も変わらない。
幸い僕が質屋に入ったのは今回が初めてだが、そもそも質入れできるモノが無いということの方が理由かもしれない。質屋というのはそれなりに裕福だった?人でないと縁遠い場所だと思う。

だからこそ「質屋に通った」ことは一葉当人にとっては単に生活苦ということ以上に日記に記録しなくてはならない出来事だったのであろう。 
 
 旧伊勢屋質屋は一葉の命日にあたる11月23日に所有者永瀬家の好意のもと、「文京の文化環境を生かす会」によって特別公開されたので、残念ながら一般に公開されている建物ではないが、周辺の一葉のゆかりの地を歩くだけでも、当時の雰囲気を楽しむことができる。

関連情報
文京観光ニュースNo.11
文京区観光協会 03-3811-3321
一葉記念館



 

近代和風建築について

 明治から昭和中頃に建てられた和風の建物を近代和風建築というが、この時期に日本の木造建築の技術が最高峰に達したとされている。職人の技、かけた時間、材料どれを取っても現在のお手本となるものばかりである。
 
 今回見学した旧伊勢屋も近代和風建築の一つにくくれると思うが、これらの建物は単に職人の仕事が丁寧だったというだけでなく、間取りやデザインも練られていて驚かされるような上質な空間がその中にある。この空間は決して古くなく、逆に新鮮に感じる程だ。
 
  中庭を持つ住宅を「コートハウス」と今時は言うが、「坪庭」の延長でもある。洋の東西を問わず昔から都市部の住宅に取り入れられてきた空間だが、いつしか日本の住宅からは無くなってしまった。最近、横文字になって復活してきたという訳だ。
 
 近代和風建築と書くともはや昔の建物というイメージを受けるかもしれないが、戦後、特に高度経済成長期以降に我々の記憶から断絶してしまっただけであって、決して過去の遺物ではない。近代和風建築には僕らの日常から忘れ去られた生活を楽しむための良質な空間があるのではないだろうか。
 
 現在公開されているお勧め近代和風住宅を紹介しよう。公開されてるだけあってこれらの建物は一般的な近代和風住宅よりもかなり趣味工夫をこらした建物だが、その分新たな発見も多いと思う。散歩がてらに是非足を運んでいただきたい。

朝倉彫塑館

林芙美子記念館

 

 

 
 
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